有能そうな無能
私は 個人経営の小さな書店でアルバイトをしている。始めてからもう一年が経ち、仕事内容は完璧にこなせるようになった。
これ以前にもバイトは2つやっていた。どちらも短期間しか続かなかった。
初めてのバイトは某チェーンレストランのホール。パンが食べ放題のお店だ。
面接した日に採用された。そこでは、研修はパン配りから入るのがセオリーらしく、入ったその日からその業務を任された。しかし、マスクをした状態で熱々のパンを運んでいると 熱中症になりかけた(ガチ)。無理だなと思い、当日に辞めますと言った。強い。
2つ目は近所のタイ料理屋さん。「賄いが美味しい」と、入りたての友人に紹介してもらった。
私は最初の人当たりだけ良い(?)ため、即日採用された。有能感を出すのだけ上手いというか…笑
タイ料理だから、メニューにはタイ語と日本語の両方が書いてあり、お客さんは どちらかで注文してくる。打ち込むハンディに書いてあるのはタイ語、、必然的にタイ語を覚えることになった。
ガイトート→鶏の唐揚げ
ムーピン→豚の串焼き
などなど。
これ全部覚えなきゃいけないのか!と鬱になってたら、社員さんが一つ一つの単語を教えてくれた。
「ガイ→鶏」「ムー→豚」「ウンセン→春雨」「クン→海老」…
こうやって覚えると、だいたいのメニューは何か予想がつく。実際メニューは直ぐ覚え、有能扱いされた。
他にも、タレを用意する仕事もある。例えば 普通の唐揚げと軟骨の唐揚げでは、タレの種類が違う。それも覚える。そんなん何でもいいやん!と思ってたけど、食べると全然違う。
慣れてきて、ハンディを持たされるようになってから、しんだ。オーダーミスが多発した。そこで自分はマルチタスクができないことを知った。いや知ってた。ハンディはアルファベットの羅列で、言われたものが見つけられないと頭が真っ白になった。完璧にしなきゃ!と思うと、それと同時に視野も狭くなり、周りのお客さんの状況を見る余裕さえ無くなった。「分からないなら聞いて」と社員さんに言われたが、謎のプライドから有能イメージを壊したくなかった。壊れていたのだけど。メッキが剥がれるように。
友人はすぐに慣れていた。なのに、自分はできない。落ち込みすぎて、ネットにあるADHD診断を受けまくった。笑
3個上の優しい先輩がよく励ましてくれて、好きになりかけた。
結局、ここは3か月で辞めた。「インターンします」と大嘘をついて。笑
そして現在に至る。
本当の能力に比べて第一印象が良すぎるが故に 相手からの評価は減点方式。これをやめたい。
バイトはすぐ飛べるけど、社会人になるとそうはいかない。あぁ一生学生でいたい。